制作あれこれ

松川佳代の絵日記。制作、講座、絵について思ったこと、なんでも。
主に別サイトにした制作・講座風景の更新のお知らせです。
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美しくないもの



今日、この朽ちかけというか壊れかけのベンチを描いていて、
我ながらよく好き好んでこんなもの描いてるなぁ…(売れないだろうなぁ)
とか思いながら

あぁ、こういうのが好きだからパステルで描いてるのか。

と妙に納得してしまいました。


水彩画というキラキラした世界も魅力ではあるのですが、
この”終わりかけのものたち”の感触を描くには、しつこく描けない水彩では表現できそうにありません。
朽ちたものを描きながら追うこの感覚は、油絵とパステルでしかできないのでは、とも思ってしまいます。



↑2010年の終わりかけのポピー


私の絵をよく知る皆さまはおわかりかと思いますが、
私は夕方が好きです。夕焼けでなくても良いのですが、光が柔らかくなる、夕刻が好きです。


以前、「病院には夕焼けの絵は飾らない」という話を聞いたことがあります。
理由は、”終末”をイメージさせるからだそうです。

そうかなぁ。
夕焼けを見ると、「今日もよくやった。明日も頑張ろう。」という気分になるのですが。
実際そんなによくやっていない日でも、何もかも世界が黄金に染まってゆく様子を見ていると
全ての存在が等しく許されるような(何に?)
大げさに言うとそんな感覚があります。



↑2003年卒業制作 「帰ってゆく太陽」


以前バイトしてたお店の店長が「閉店作業って嫌いなんだよね、なんか終わりに向かうって感じで。」と言っていた横で
私毎日閉店作業なんですけど…と思いながら、自分は嫌いじゃないな、と思ったことがあります。
当時置かれていた状況から自己肯定したかったせいもあると思いますが。

そのせいか、老いゆく人と生活していた頃も、不思議と嫌ではありませんでした。
人の皺も、染みも、生きた痕跡はレンブラントの肖像画のように美しいと感じます。

それはもしかしたら、絵画の歴史で言う「メメント・モリ(死を思え)」とかに繋がる感覚でしょうか。


なんか話がズレかけてますが、

夕焼けは悪いイメージではないのだけどな、と私は思うのです。
でも同じように、曇りなどの「部屋に飾るには寂し過ぎる絵」も、購入材料としては好かれない傾向にあります。

一般的に、明るく元気になりそうな絵の方が重宝されるのは、ストレートに理解できます。
「ハレとケ」を重んじる日本人の感覚もあるのでしょう。
ただ一方で、「ワビサビ」という感覚もあります。



↑2009年 「終わりかけの花・6月」


「侘び」という言葉に集約してしまえば実に単純なのですが、
私は年代ものの焼きものや考古学的出土物を観るのが好きです。


「侘び」が芸術に成り得るのは分かっているけれど、自分でそれを表現するのはほとほとほとほと遠い。


それが的確に表現できなければ、ただの「終わりかけの美しくないもの」になってしまう。




↑2004年の油絵 「眠る家」 近所の切り株が気になって気になって。



個展中に、お仲間の絵描きさんと「絵描きは不完全なものが好きよね」という話で盛り上がりました。
多摩川の河川敷がコンクリートに舗装されてがっかりだとか。
公園も除草作業をすると綺麗すぎるとか。
日本庭園は造りものだから描く気がしないとか。

そういう、誰かの作為の手から離れたものの魅力を描ける画家になりたい。

19世紀末、印象派がフランスで熱を帯びる頃、オランダのハーグで世界一大きな油彩画が描かれました。
360度・120メートルに及ぶ海岸の風景を描いたのは、静かな漁村の開発に反対した画家たちだったそうです。
結局、その土地はリゾート開発されてしまい、当時の美しい風景はあの絵の中にしか存在しないとか。
(そのハーグ派の展覧会は6/29まで損保ジャパン美術館でやってます)


モネの連作初期の「ポプラ並木」は、やはり土地開発が決まっていて、せめて描き終わるまで待ってくれと、モネは土地ごと買い取ったそうな。



消えゆくものへの何か。



そういう感覚的なものを自由に追い求められるのは、十分に大成した画伯かはたまた画商に売れ筋の注文をつけられる必要のない売れない画家だけ…なのかも。


ようし、また真っ赤なポピーを描くぞ。
終わりかけの美しいものが描けるまで。

 
| Kayo | 制作 | 01:19 | comments(6) |
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